創意工夫を続ける探求者
安田勝さん(安田サボテン園)
伊勢湾台風で大打撃を受けた桃山地区
自宅の裏に並ぶハウスで、250種類以上のサボテンを栽培している安田サボテン園。元々は安田勝さんの父の代から果樹農家で、桃を主体に柿やりんごを栽培していました。伊勢湾台風の当時、勝さんは中学生。暴風で家の雨戸がはずれないよう固定し、りんごの実が落下する前に慌ててもぎったことなど鮮明に覚えているそうです。
果樹園が壊滅状態となってしまったため、近隣の農家に誘われてサボテン栽培を始め、高校を卒業した勝さんも稼業に精を出しました。
平成4年に独立し、自分のやり方を確立
安田サボテン園は苗を育てる第2次生産に特化し、伊勢湾台風が襲った昭和34年(1959年)から約30年間、育苗を続けてきました。その後、かねてより「自分なりのやり方でやってみたい」と考えていた勝さんは、平成4年(1992年)に独立。第1次生産農家に頼らず、実生から育苗、卸売まで自ら手がけることになりました。
独立するからには、周囲と同じことをやっていてはいけないと考えた勝さん。それまで実生栽培では定番だった佃煮箱と呼ばれる木箱の使用をやめ、小さなマスに仕切られたセルトレーをいち早く取り入れました。仕切りがあることで、植え替えの際に苗同士の根がからまって傷んだり、病気が伝染したりするのを防ぐことができ、仕入れ業者から喜ばれました。
探求し続ける日々。目指すは生涯現役
勝さんは今もなお探究心を欠くことなく、「もっとよい栽培方法はないか」と模索しています。最近は、LEDライトを使って冬の間の日照不足を解消する実験をしているところなのだとか。
「サボテンが好きじゃなかったら、とっくにやめているよ」と笑う、勝さん。「サボテンは色も形も個性的できれいな花も咲く。トゲは痛いけれど、それもサボテンならではだね」と、サボテンへの愛情はたっぷり。勝さんにとって、サボテン栽培は趣味と実益を兼ねた人生の楽しみでもあるようです。