苦楽をともに半世紀 仲良し兄弟
伊藤福雄さん・義明さん
新天地を求め、自然豊かな桃山地区へ
伊藤福雄さんと義明さんは、知多郡美浜町の出身。戦後の食糧難だった幼少期に新天地を求めて家族で桃山地区に移住してきました。広大な畑で柿や桃の木、野菜などを育てていましたが、伊勢湾台風以降は、伊藤サボテン園から委託を受けて苗を育てる第2次生産を本業とするようになっていきました。
兄の福雄さんが始めたサボテン栽培ですが、ハウスの数が増えるにつれて人手が足らなくなり、昭和30年代の終わり頃には弟の義明さんが勤め先を辞め、兄弟二人三脚で栽培をするようになりました。
ブームに後押しされ、多忙を極めた日々
昭和30年代後半から昭和50年代頃までは海外への輸出が盛んでした。毎年、カナダやオランダ、ドイツなど海外の業者が商談のために桃山地区を訪れていたとか。また、この頃ディズニーのドキュメンタリー映画「砂漠は生きている」が公開されて人気を呼び、国内にサボテンブームが到来。福雄さん、義明さんの畑からも群馬、長野、千葉などを中心に日本各地にサボテンを出荷したそうです。始めは1棟だったハウスは23棟まで増え、パートさんにも手伝ってもらいながら家族総出で作業に追われる日々でした。
伊藤サボテン園から受け継いだ実生栽培
委託元だった伊藤サボテン園が廃業することになった際には、実生栽培を受け継ぐことを決め、以降は実生栽培から育苗までを一貫して手がけています。最近では、コロナ禍で海外からサボテンの種が入手しづらくなったこともあり、種のほとんどは自家採種をしているのだとか。
実生から育苗までとなると作業工程も多く、「元気なうちは続けていきたいけれど、若い人たちにも継承していってもらえたら…」と、福雄さん、義明さん。兄弟で半世紀に渡って携わってきた春日井サボテンが、この先も続いていくことを願っています。