春日井サボテンの画像

サボテンの一大生産地
愛知県春日井市生まれの
「春日井サボテン」

愛知県春日井市のサボテン栽培は、昭和28年(1953年)頃、果樹栽培の副業として始まりました。転機は昭和34年(1959年)に発生した伊勢湾台風。台風で多くの果樹が被害を受けた一方、サボテンは被害が少なかったことから、それ以降の栽培主体をサボテンに切り替え、市内で広くサボテン栽培が普及しました。平成18年(2006年)まで実施された「農林水産省作物統計調査」では、「サボテン及び多肉植物」の出荷量で全国1位となっています。

春日井サボテンの画像
愛知県の画像

全国有数の実生みしょうサボテン生産地
愛知県春日井市

春日井市は、種から育てる「実生栽培」に特化するという、全国的にも珍しいサボテンの生産方法により、全国有数のサボテン生産地となりました。「実生サボテンといえば春日井市」とも言われています。観賞用として人気のあるサボテンですが、それだけにとどまらず、サボテンの持つ力に着目した食品や美容品を開発したり、市内外の人々が楽しめるイベントを開催したりするなど、「春日井サボテン」を通じた地域活性化に取り組んでいます。

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春日井サボテンの成長

実生みしょうサボテンってなに?

実生栽培とは、種まきをして発芽させた稚苗(ちびょう)を幼苗(ようびょう)まで育てることを言います。何百種類もあるサボテンはそれぞれ種をまく時期や注意すべきことが異なり、長年の経験を必要とするため、種から育てる実生栽培は全国的にも珍しく、春日井のサボテンを特徴づけることになりました。

種まきは、湿度の高い5月下旬から7月頃に行われます。種をまいて2週間〜1か月くらいで発芽し、3か月後には小指の先ほどに成長します。約6か月間育苗し、直径1cmくらいになった幼苗を第2次生産農家に委託します。1年〜1年半かけて移植を行いながら育苗し、直径3cm〜5cmの小苗から中苗まで育て上げたものが、販売品として全国のサボテン農家さんへ旅立っていきます。

春日井サボテンの歴史

  • 昭和28年頃

    果樹農家が始めた
    サボテン栽培

    春日井市のサボテン栽培は昭和28年(1953年)頃に始まりました。果樹栽培が盛んだった桃山地区で、ある一軒のりんご農家が愛知県内の農家からサボテンを譲り受けます。苗を育てていたところ、自然交配したサボテンが種をつけたことに着目し、実生栽培に取り組むようになりました。近隣農家にも栽培をすすめると、果樹栽培の傍らサボテンを育てる農家が徐々に増えていきました。

  • 実生栽培と
    接ぎ木の技術を確立

    実生栽培を始めた頃は、種が腐ってしまったり、芽が育たなかったりと苦労が多くありました。試行錯誤の末、木曽川下流域の川砂をまき床にして発芽率を高め、半地下のピット型温室で温度低下を防ぐなど、独自の栽培方法を確立。また、赤く美しい色合いが人気の高価な緋牡丹(ひぼたん)を、接ぎ木の技術を活かして竜神木(りゅうじんぼく)に接ぎ合わせることで、安価な大量生産を可能とし、出荷量を増やしていきました。

  • 昭和34

    伊勢湾台風を契機に
    専業化が進む

    昭和34年(1959年)の伊勢湾台風は桃山地区の果樹園に大きな被害をもたらしました。桃、ぶどう、りんごなどの果樹はほとんどが倒伏し、全滅に近い状態でした。一方でサボテンは被害が少なかったため、それまで副業で栽培していたサボテンを専業化する農家や新規参入する農家が現れました。当時はサボテンブームで需要が右肩上がりだったこともあり、サボテン栽培は市内で広く普及していきました。

  • 分業体制を構築し、
    実生栽培日本一に

    サボテン栽培が盛んになると、第1次生産農家が種をまき、第2次生産農家に育苗を委託する分業での生産体制が構築され、最盛期には市内に70軒ほどのサボテン農家があったといわれています。実生栽培をしていると新たな交配品種が生まれることも多く、「桃山地区に行けば、いろいろな品種のサボテンがまとめて手に入る」と、全国から買い手が訪れました。そして、平成18年(2006年)まで実施された国の調査では、春日井市のサボテン栽培は出荷量で全国1位を誇りました。

  • 平成18

    「春日井サボテン
    プロジェクト」を展開

    平成18年(2006年)には、サボテンを春日井市の地域資源として位置付けてまちおこしに活用しようと、「春日井サボテンプロジェクト」を発足。春日井商工会議所が中心となり、食用サボテンを使った商品開発、サボテン関連商品の販売、サボテンのイメージキャラクターを用いたPR活動などを行い、春日井サボテンの魅力を市内外に発信しました。

  • 現在

    さらなる「春日井サボテン」
    の普及に向けて

    現在は春日井市観光コンベンション協会や市が主体となり、「春日井サボテン」の普及を目的にさまざまな取り組みを行っています。その中の1つとして、春日井サボテンの魅力をより広く知ってもらい、市民に親しんでもらおうと、令和3年(2021年)には春日井市の新しいシンボルとなるサボテンを模したロゴマークが誕生。今後はロゴマークを活用したさまざまな取り組みを展開していきます。また、市内でのサボテン生産量底上げのため、生産農家の新規参入を促すなど、名実ともに「サボテンのまち春日井」を目指し、サボテンを楽しめるまちづくりをしていきます。